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「ウーマン・イン・ブラック」大阪千秋楽(ネタバレ注意) [上川隆也]

ぴんと張り詰めた緊張感のなか、物語はクライマックスを向かえ
恐怖の戦慄が劇場を支配し、終わりました。
カーテンコールでは何度も呼び出された二人。
上川さんが指笛を吹けばスパイダーが出てきてかわいいのなんのって。
お二人ともとっても喜びに溢れた素敵な表情をしていらっしゃいました。
何十回観ても、この作品は作品と役者の魔法にやられちゃいます。


以下、99年の観劇日記を引っ張りだしてきました。
99年の時に見た、私的な最高値をまだ越えてはいないので、
まだこれからどんどん深くなっていくんだろうなって思います。

いや、もう、このままで十分なんですよ。
前に観た時は、手に持っている懐中電灯がガタガタ音を立てて震えていたり、
していたり、お茶を持つグラスもガタガタ震えてたり、極度の困憊状況が
伝わってきたんですよね。
これから、どんどんキップスの心情がよりくっきりと表れてくるのでしょうね。
ええ、もう、このままでも十分心情は分かるんですけども。



物語の順に書いてみたいと思います。(でも、順番に自信無しです)

99年の書き溜めた日記を読み返し、今公演より特に印象に残っていたことは
後日、アップしますね。

まず、今回も99年同様に感じたところを書いてみたいと思います。


◎手の動きや足の組み方一つ一つが、英国人。
音を鳴らして、さぁ、と言わんばかりに両手を広げてさっと挙げるところもいいですよねー。


◎相変わらず、「それはクリスマスイブの夜でした」から始まる超・超長い台詞、いいですねー。
「怪談話を始めました…」「荒涼とした~、開かずの館、何かが逃げ去る音…それは一種の娯楽のようなものでした。」
「今度はパパの番だよ、一つくらいは知ってるさ」
そして、「それは暖炉を囲んで話すような話じゃないんです」
声のトーンの変化、間、声色、完璧です!!
特にツボなのが 「明るい月の輪がかかっていました」の「月の輪」です。

ここの場面って、単調な台詞回しをされては、
眠ってしまったと思うのですが、とっても観客を惹きつけるような
表情、声色を効かせていて、さすがだなーと思いました。


◎キップス「貴方を見ていると昔のわたしを重ねてしまう」
俳優「同情していないなどど、思わないでください。私にもこどもがいますから。」
キップス「それで元気ですか?」
俳優「ええ」
キップス「大切に育ててください」
俳優「明日は貴方を驚かすように頑張ります」
 
→この「子供がいます」…

これだけで、俳優がどんな家庭を築いてるのか簡単に予想できました。彼の声調に、そしてあの目だけで。


そして、斎藤さんを見る眼がこのうえなく優しくあたたかくて。
今回のお芝居の中で一番ここが優しい目をされていたように思います。
きっと家族のことを思い出していたのでしょうね。
☆「子どもがいます」ここの目と目の周辺の表情がたまらないですー。
斎藤さんが「頑張りましょう」みたいな台詞を言いますが、
その瞬間に上川さんの眉と眉の上の筋肉がぴくぴく動いて「素晴らしい…」という上川さん。
言葉なくともあの絶妙な笑顔。スローに変わっていくあの表情。また、この語感がいいのですよ。

◎そのあと、葬儀に向かうシーンに入るのですが、たどり着いた街を見渡す目。

「市民の注目の的みたいですね。ほら、あそこ(指を指す)…」
「祭りの見せ物みたいですね」とかわいいポーズを取る。

→上川さんがこのポーズを考えられたのでしょうか?
上川さんらしいな、と思ったので…。この笑いで、この先、起こる不吉な出来事の落差効果が出ます。

◎ケクイックの馬車に乗って、街をゆくシーンでは、声のトーン、そして目線で
彼が今、どんな光景を見ているのか、私も目で楽しむことができました。

「この感覚…」目を閉じ、目の前に広がる美しい光景に浸る顔、
「灰色の空とあつーい雲に覆われて…たらどんなに…」
なんて言い回しとその視線が、見ていて、聞いていて気持ちいいです。

◎「これがナインライズコーズウエイか!」と馬車を降り
「(館について)美しいと感じました」この語感が情緒あるんですよねー。


◎教会のシーンの後の「いや、感動しましたー」のところで、
「種明かしは…」と一瞬見せるあの笑顔が絶妙なものに。
ここも大好きなシーンなんです…。

◎葬儀シーンが済み、舞台が明るくなり、
劇中劇を中断して「今日は僕を驚かすと言っていたけれど、どうやってやったんですか?」と
子供みたいに目を輝かせて言うんですよね。

新しい出来事に遭遇してわくわくしてる、かわいいのなんのって(いや、失礼!?)。
「しかし、何もないところから…衝撃的な出来事でした」「本当に感動しました」

→この「感動しました」と言ってオールドキップスを見つめる目、
そのトーンから彼がいかほどまで感動したか、伝わってきました。

ここと同じくらい少年のような無邪気な瞳をしていたのは、
ラストのシーンで「彼女はいいですよね~」と言っている時です。

この2シーンの無邪気な瞳は、その直後、彼に待ち受けている隠された恐ろしい事実との
落差を効果的にしたと思いました。


◎墓地へ行き、後ろを振り向くと、黒い服の女性が…!
はーはーと息を切らしながら逃げ出す。
「ダメだ……。うまく説明できない」と声、体が震えています。
「人間業とは見えない形で姿を消した…」と。


◎墓場から戻ってきて、顔には汗、広げた腕を籠にへばらせて、
籠にもたれておどおどして空を仰って顔「私は幽霊を信じていなかった」と言うところ。

キップスはとても怖がっているせいか、とってもお顔が小さく見えて、
しかも、子どものような顔になってるんです。

なんででしょうねー。
同じ人が演じているのに場面ごとで顔の大きさが違って見えて、
この場面はいつ見ても、お顔が小さくって、言葉をいくつか発せられ
「私は幽霊を信じていないかった」と立ち上がり、かっこいいんですよねー。

◎1幕ラスト。最後の一言、緊張感が残ったままの一幕の終わりでした。
「私は夢遊病状態のまま…」ってところです。



◎イールマーシュを出ようと道を歩いていると海霧が現れ、
1,2ヤード先も見えなくなり、
さっきまで見えていた館も見えなくなりました。

向こうから馬車の音、女性の悲鳴…。急いで館に戻りました。

「食堂!居間!!書斎!!」と部屋を駆け抜けるキップス。

どこのドアも開いていた。
息を切らし、動揺しているキップス。

立てないのです。
不安が一気にキップスを襲ったみたいです。

そのとき、一つだけ三階に通じる通路を見つけたのです。

よろよろとした足取りでドアのそばにたち、
ノブを回すが回りません。鍵も閂もないドア。
なぜ、ここのドアだけ開かないのか?

一層不安をかき立てドアを叩き、叩きまくり、救いようのない涙声をこぼしながら
ドアの前になだれこみました。

→このドアのたたきっぷり、キップスのやるせない思いが、
痛いほど伝わってきます。あの振り絞るような声…かわいそうでかわいそうでたまりませんでした。

◎しばらくして、ドンドンとドアを叩く音が…。恐怖に凍てつくキップス。
涙か冷や汗なのか、わからない…頬が濡れているキップス。ドアにへばりついて膝が伸びないんです。

デイリーさんがキップスの前に現れたのですが、
それでも怖くて思わず顔を背けてしまいますし、
きちんと立てずに、ドアにもたれて立ってるんです。

「こんな時間に来るとは思わなかった…」と声が震えています。

→極限におかれた人間の状況が切々と伝わりました。
こんなに震えて脅えているキップスを客席で見ているだけで
何もできなくてごめんなさい…でした。
 

◎スパイダーを館に連れていって書類整理にかかるキップス。
「こんな役立たずの書類の束見たことあるかい?…買い物のメモまである」
こ一段落して寝ようと寝床を作って横になるキップス。ベッドの上に
飛び乗ったスパイダーを下に降ろして眠りに入ります。


→この表情がとっても温かいんです。スパイダーがどんな犬か見えてくるようでした。
夜も静まり、スパイダーが鳴きだしたのでしょう。
「どうした、スパイダー?」とキップスは目を覚まします。
異様な音が上から聞こえてきて、ドアを開けて上へ通じる階段を上って行きました。

 

◎口笛が向こうから。スパイダーが館を飛び出してしまい、追いかけるキップス。 
沼に足を取られて体が不自由になりながらも、懸命にスパイダーを
沼地から引っ張りあげるキップスの姿はまさしく死にものぐるいでした。
この館では、スパイダーが頼みの綱というか、心のお守り。絶対死なすわけにはいきません。

→暗闇の中の通路を疾走する上川さん、すごい。
 

◎電気が消え、懐中電灯を取り出しふと照らすとそこに黒い服の女が。
恐怖のあまり懐中電灯を放り出してしまいます。
懐中電灯を放り出してしまったので、ローソクに灯をともして燭台を取りに子供部屋へ行きます、
→灯が消えないようにろうそくに手をかざしながら行くのですが、
そのとき、影は映っていません。
しかーし、燭台にローソクを乗せて歩き出すと、手のひらの影が彼を覆いだし、
その影が段々大きく鳴っていくのが不気味で不気味で怖かったです。



◎館を離れようと思ったときに、子供部屋からオルゴールの音が。そこへ行くと荒れ放題。
「なんてひどい…」と血相を代えて取り乱して部屋を降りる姿が焼き付いています。
で、ぱっと子供部屋を見ると黒い服の女が揺り椅子にもたれてるではありませんか!


「助けて…神様~」と声を絞り出し、でもその声は震えてて、悲壮感がすごく漂う。
かわいそうでかわいそうで、居たたまれませんでした。

デイリーさんが迎えに来ていたので、荷物を片づけ、馬車に乗るキップス。ブランケットをデイリーさんにかけてもらっても、頬の震えが止まりません。デイリーさんがスパイダーを馬車に乗せても、気にとめないくらいに。

→彼の気持ちを察するには「なんてひどい…」…それだけで十分でした。
あの震えを見れば。上川さんには飾り立てる言葉なんて要らないって思いました。


◎街に戻ってきて、デイリーさんに差し出してもらった水を一気に飲むのだが、むせてしまう。
声は震えています。「ここはあそこから離れていますし、
私の気持ちも落ち着きました。本当のことを教えてください」と言っていますが、
言葉と裏はらに変な汗をかいていましたね。
ヤング・キップスはあまりの忌まわしい体験で、まだ呪縛から放たれない面もちなんです。


ここでは、ドラブロウ婦人の話を聞かされて、
顔が紅潮してあふれてきそうな涙を目頭に指を当てることで押さえ込みます。
「黒い服の女と子供とどういう関係があるのですか?」と声を振り絞って心の底からの叫びです。
 
◎「残りの話は一つになりました」と言って、
「それから二ヶ月後、結婚し、…子供がうまれ、…デイリーさんに名付け親になってもらいました。
その翌年の年…」「…芝生の上で遊ぶこどもたち。~な水面に、野外音楽堂」
「ちょこちょことジョセフを連れて歩いていました。
ポニーに乗せ…すると(ここから声が変わります。黒い女が…」

→声のトーンの変化がお見事でしたねー。自然でいて。あたたかくて。
劇中劇が終わります。二人とも感無量で黙って手を握りあいます。

◎椅子を直しながら「彼女はいいですよねー」
「えっ?」
「あなたの手品ですよ」
「驚かすとおっしゃったでしょ?」
「それは台詞を覚えてきたということで…」「若い女?若い女…いいえ見てません…」

→ここの語り口もとってもなめらかで礼儀正しくて大好きです。

…俳優の瞳孔が大きく開いて下をうつむきました。

☆「ステラに一筆走り書きをしました」と目線を下におろす間隔、目の使い方が好きです。
☆宿泊先で「キップスさん」と声をかけられビッキリキョトンとするお目目がかわいいです。
☆宿泊先で、斎藤さんが去った後。
「アリスドラブロウの話が出たとたん会話が途切れた…~な○○、…な△△、---な◇◇。

どこか頭の回転が早く(ここで指をおでこにあてる)さしずめ、魔女の烙印でも押されたのだろう」も
すごく情感を残しながら、
劇中劇を中断して、「どうです、キップスさん?」と変わるのとかもいいですー。

切り替えの間といい、その間においたメリハリが強いでもなく弱いでもなくほどよい頃合い。

(彼の言葉は何度聞いても「美しい日本語、」ですしし、声色、抑揚も
間の取り方も冴えて、気持ちいいのですよね。)

☆あれだけの台詞よく、つかえずに、時には 一気に長~い長い言葉を
一気にしゃべることも何度もあって、そのたびに感心したものです。

しっかりとした腹式でなかったら、
変なところで呼吸(句点)が入ってしまいそうなのに、素晴らしい。
一回たりとも、変なところで呼吸は入りませんでしたし。

これは欲目、贔屓目さしおいても、
そして今回初めて、この役者を知ったとしても大感心していたポイントですね。
今回は、どこが一番良かった、と聞かれると困ってしまうんですが、
超・膨大な台詞(私が今まで見てきたすべてのお芝居の中で、
多分、今回の上川さんが一番多い台詞だったと言ってもイイです)なのに、
全部、書いてある言葉に聞こえないし、
なんでこんなに「声」の表情が豊かで日本語が美しいんだろうと思いました。

メリハリ、緩急、トーン、とても気持ちがいい。

そして、声が良く通るんですー。

これが。つぶやき声までも、最後列にきちんと届くし、すっばらしい腹式。
安定した声量でもって、上川さん特有の艶のあるお声が劇場に冴え渡ります。
感動した声、震え声、叫ぶ声、ひそひそ話。


前回も「声」については、書きましたけど、ほんとに惚れ惚れです。
テレビに出るようになってから、
舞台に立てる回数は減ったけど、声帯、腹筋はますます強くなってません?
見えないところで、鍛えていらっしゃるんでしょうねー。


また、後日、いろいろ「ウーマン・イン・ブラック」について
書き足していきまーす。

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