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MONO第35回公演「なるべく派手な服を着る」 [お芝居]

劇団MONO 『なるべく派手な服を着る』
3月1日(土) 15:00 HEP HALL 1列目観劇
公式サイト
http://www.c-mono.com/

ひよこ一押しの作品です。
MONOは、質の高い会話劇の間(ま)と呼吸を真骨頂として、活動している京都の劇団です。
150人キャパの小劇場のあの密な空間もたまらないです!

関西公演は今日が千秋楽ですが、東京は6日から16日まで上演されます。
ひよこ、超おススメの劇団、脚本家の劇団です。
帰りに、友達とMONO談義、作家の土田さん談義で盛り上がりました。
土田さんの才能にいつも感服しちゃうんですよねー。
いつ、行っても極上のエンターテイメントです。
この劇団の演出・脚本・役者の土田さんは、ドラマ「斉藤さん」の脚本も担当され、
文学座の新劇に、宮本亜門さんのミュージカルにも書き下ろしもしたりしています。
また、MONOの作品がプロデュース公演になったり、映画化もされています。

去年、シアターコクーンではMONOの作品「橋を渡ったら泣け」を生瀬さんが演出し、
戸田恵子さんや大倉孝二さんや八嶋さんが出ていましたし
「燕のいる駅」では、ジャニーズの相葉くんが出ていましたねー。
「約三十の嘘」は映画になり中谷美紀さんや妻夫木くん、椎名桔平さんらが出ていました。
あ、草剪くんのリーディング舞台も土田さんの脚本・演出でした。
次回公演は来年春までなくて寂しいですが、
その間に映画、ドラマ、舞台の脚本執筆だから仕方ないですね。

もう劇団結成して19年だそうですが、こう長く劇団活動ができるのも
仲が良すぎるっていうのもあるんですが、年に1回しか活動しない(できない)から
常に新鮮なんですって。

土田さんの作品を説明するのって難しいんですが、
基本は軽妙な会話劇。
絶妙な「間(ま)」と「呼吸」を得意としています。
以下は、以前の感想でも書いたことの転載になってしまうんだけど、
あの会話の積み重ねがすごく好き。
いつも土田さんの作品には主役がいないっていうのが私は好きですね。
ほら、普段の生活も主役っていないですよね。ちょっとだけ特異な設定なんだけど、
でも、会話はごく日常的。

各登場人物のキャラが立っていて、誰かを前に出すことによって役を浮き立たせるんじゃなくて
日常にある相手との関係性や相手との会話の中で人物全員が平等に浮き立ってくるんですよね。
その分、一層、舞台が心理的に近く感じるの。
ほんとね、どこにでもありそうな会話のオンパレードなのよ。
だけど、すごく引き込まれていく。大きな場面展開もないし、派手な演出も無い。
笑いっぱなし

その笑いは、ガハハじゃなくて、クスクス。
人間の悪い意味でのおかしさ、哀しさに対して笑っちゃうんです。

喜劇なのにシリアスなことをついていて、その喜劇性と人間の愚かさ、ずるさ、哀しさのバランスがとても心地いいし、

その人間の深層部分に共感しちゃうんです。
人と人が交わっていくときに生まれるズレが、なんともペーソスたっぷりで。

毎度のことながら、
ツッチーこと土田さんが愛情を込めて登場人物を深く丁寧に描いて脚本が素晴らしいし、
役者の間(ま)と呼吸は、この劇団の特権ですよ。


さて、今回の舞台のあらすじは
四つ子の兄たちがいて、間に1人いて、六男の養子、翔がいる。
4つ子の兄たちは六にとても可愛がられ、間の五男は目立たない。
それでも五男は存在を認めてもらいたくて、いつも「なるべく」派手な服を着ている。
そんな「久里家」のちょっと愚かな物語。

この「なるべく」が味噌で、本当にド派手な服を着ていれば、存在感もあるんだけど、
ど派手な服を着る勇気がないところが五男の性格でもあるんです。
弟の翔から「なんとかっていうお兄ちゃん」と呼ばれたり、とにかく、存在感が無い。
彼女とけんかしても、彼女は、全然そのことで落ち込まないし、むしろ熟睡できて、その五男と会っていた事さえ覚えてない、という。
小学校のときに、7000本の爪楊枝で作った法隆寺の夢殿のことも、真正面から車に轢かれたことも覚えてもらっていない。



その6人兄弟が、父の命も短いということで、長男と父が住む家に6人兄弟と次男の妻と四男の妻と
五男の彼女が「九里家」に集まるところから始まりました。
父が亡くなった後は、このおんぼろな家を売って、マンションを建設してもらって家賃収入で
生活していこうと思っている家族です。

まず、劇場に入って、「うぉー」って思ったのが舞台美術。
古いおんぼろなお家が建っていました。ここまで精密・緻密なお家のセットは
観たことないくらい。天井の棚にも農具が置いてあったり、隅から隅まできめ細かに
お家が再現されていて、この舞台美術を見ただけでもお値打ちがありましたね!
それに、居間の掛け軸には「家庭円満」って書いてあって笑えたんですけど。

登場人物の性格は、会話の積み重ねで次第にあぶりだされてきて、
その性格のあぶりだし方が、たまらないんですよね。
土田さんの作品に欠かせない「会話の間と呼吸」と並んで土田さんの技の見せ所です。

長男の勝:書家として父と暮らしている。20年前、強盗殺人の容疑者として誤認逮捕されたことがある。
      長男ということを誇りに、自分の言うことは絶対だ、という自負がある。
      
次男の悟:長男にあこがれている。将来の夢は「長男になりたい」
三男の隆:売れっ子カメラマン。最近は有名モデルと付き合っていた。
四男の賢:小学校は3年までしか通学していない。虎はオス、ライオンはメスしかいないと思っている。
       現在無職で、内縁の妻・まりのちくわ工場での収入を頼りにしている。
       いつも 内縁の妻、まりを怒鳴り散らしている。「まりっっっ!!!」って。
  
五男の一二三:存在感がなく、いつも存在を忘れられてしまう。
六男の翔:四つ子の兄から溺愛されて育つ。

次男の内縁の妻(真知子):へんな丁寧語を使うが、実は二面性を持つ女性。
                勝に色目を使う。
四男の内縁の妻(まり):お友達もいない。旦那の賢にいつも怒鳴られてばかり。
一二三の彼女(梢):五男の一二三の彼女。一二三は彼女を家族に紹介しようと家に連れてきたのだが、
梢は隆のファンでもあり、一二三の存在感の無さを理由に別れようとしている。


この九里家は、とて不思議な家です。
九里家では長男が一番権力がある。
「おいおい」の代わりに「おひおひ」を使う。
結婚はしては駄目、パスポートを取るなという家訓がある。
たまり鍋というお鍋料理がある。おしょうゆの中にお野菜をどかっと入れて
マヨネーズをつけて食べるという。
賢の家では三日に1回も溜まり鍋をするらしい。
また家は迷路のような作りで、
居間から台所に行くには、廊下じゃなくて、小さな押入れから行かないと駄目。
でも、台所に行こうと思って行くと、居間に戻ったり。
改築に改築を重ねた結果、複雑な家の作りになっている。
土田さんのインタビューに寄れば、この家族関係の複雑さを示しているのです。

で、この四つ子は、顔が全然違うのだけど、とっても仲良しで4人結束して
六男を溺愛しているんですよ。
で、その四つ子のヒエラルキーを長男がしっかり保とうとしている。

だけど、父の告白で分かった事実に四つ子は絶望とする。
みんな、血が繋がっていない兄弟で、全部養子だったのです。

なるほど!だから、婚姻届も出しては駄目だったし、パスポートを取るのも
禁止されていたわけなんです。

しかも、四男は、誰が父親か分からないし、誕生日も分からない。
勝がこれまで長男として威厳を発揮していたけど、この瞬間から悟が
長男として威厳を発揮して、立場逆転。(このあたり「何もしない冬」「橋を渡ったら泣け」
「その鉄塔に男たちはいる」を思い出させる)
四つ子は自分たちも養子だとわかると、これまで可愛がっていた翔に対しても
普通の扱いに下がる。

賢も、急に内縁の妻に怒鳴らなくなってしまうし。
で、その存在感のない、一二三が父の息子だとのこと。

そして、悟の内縁の妻、真知子が勝に色目を使って、勝と関係を持ってしまうという。。。
そういう二面性を持った人っているよねぇ、なんて思いました。
なんと、隆までにちょっかいを出していたんです。
1周忌で集まった6人兄弟。
悟は真知子を連れてきていない。実は、真知子がおめでたという。
だけど、本当に悟の子なの?っていう空気が流れる。

この日も、独り存在感がない一二三。
今日の一二三は派手な服じゃない。
そして、いつも自分がいた場所で泣くんです。
そのときに、彼の存在が大きくなって
兄弟が「一二三」と読んだり、子供の頃のエピソードを思い出すんです。
この場面には感動しました。
一二三と別れた?梢も最後には「一緒に帰ろう」って。
更には、この日、分かった事実は、一二三も養子だったこと。
翔が四つ子の誕生日だということで、坂の下の洋菓子屋さんで
ケーキを買ってきたんだけど、実は、一二三のお父さんが洋菓子屋のご主人ということがわかったり。

6人も養子とは。
よほど、子供が好きだったんでしょうね。
しかも、全員男の子。

土田さんのインタビューにこう書いてありました。
「もともとは「ひとりとばして誰々」みたいなタイトルにしようと思っていたんですね。それは、僕自身がすごくコンプレックスが強いんですね。他者に自分がどう映っているかが気になって仕方ない(笑)。いいことは自分の心に届いて来ずに、だいたい否定的なことだけがいつも自分の心に届いてくる。写真なんかでも右から誰々誰々、ひとりとばして誰々みたいに、そのとばされてる人が自分に見えて仕方がないというか、常に自分が忘れられているような気がしてしまう。
最初は、そういう人物をデフォルメして描こうと思っていたんですけど、だんだん登場人物全員がいびつな感じになってきて。どの登場人物もなにかしらゆがんだ自己像みたいなのを持っていて、他人に規定されることでしか自分自身を確認できない。その確認の仕方っていうのがそれぞれいびつで、どうしてもそこから逃れられない人達の話になりました。」と。

はい、まさしく、翔以外は、どの登場人物もどこか闇を持っている、そんな感じがしました。

今回は13年ぶりの客演を招いての舞台だったんですが、
あのMONO特有の空気をうまく吸収してらして、安心して観ることが出来ました。
小さな劇場での舞台ですが、ぜひぜひ、みんなに観てもらいたいなぁって思うそんな作品でした。

昨日、一緒に観劇した友達は、上川さんファンでもあり、アッキーファンでもあり
MONOファンのお友達です。
彼女も、私と同じ流れで上川さんファン→キャラメル観劇となって、
転球劇場、ランニングシアターダッシュ、パイパーなど小劇場を見たりしていて、
新感線大好きの彼女でもあるんだけど、
MONOを2000年に誘ってあげたら、とても気に入って、
それからはずっと彼女も欠かさずMONOを観に行ってるんです。

でも、最近は二人ともドラマシティやメインホール、BRAVAでやるような大きなお芝居の観劇が続いていたし、
「やっぱ、小劇場いいよねー」って原点に返っていた私たちでした。

今は大きな劇場に行く回数が増えたけど、前までは
今は無くなった扇町ミュージアムスクエアと近鉄アート館に近鉄小劇場、
そして伊丹アイホール、HEP HALL、劇団の稽古場での観劇が多かったんで、
小劇場の心地よさを懐かしみながら帰りました。

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